諏訪の龍神さま
諏訪龍神プロジェクト
諏訪龍神プロジェクトとは
<諏訪の子どもたちが誇れる地域に>
きっかけは、長野県のソウルフード『みんなのテンホウ』社長・大石壮太郎さんのこんな一言でした。
「地元の子どもたちが、誇りを持てる地域にしたいです」
そう感じた背景は「諏訪市にずっと住みたい」と思っている諏訪の高校生が、11.7%しかいないと分かったからです。
一番の理由は「魅力あるイベント、遊ぶ場などが少ないから」でした。※平成27年『若年層を対象としたアンケート結果』より
この地域に長年住んできた大人たちは、歴史の深さなど、誇れるものが沢山あることを知っています。
しかし、子どもたちは知りません。「大人が伝えていくことが大切」だと大石さんは言います。
そのような経緯もあって、諏訪だけでなく全国でもあまり知られていない
『諏訪の龍神さま』の民話を伝えていくことになりました。
絵本紹介
絵本「諏訪の龍神さま」
龍神さまを伝える 4つの民話を再話。巻末に「諏訪の龍神様之図」「龍神さま年表」を掲載しています。
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『信濃には神無月がない』
諏訪湖には、大きな大きな龍神さまがいらっしゃいました。
旧暦の10月、出雲で行われる全国の神さまの集まりに行くと、あまりにも大きかったので、頭は出雲でも、尾はまだ諏訪湖にあった。そんな姿を見た出雲の神が「そのような大きな体では、ここまで来るのもひと苦労であろう」とおっしゃいましたので、出雲に行かなくてもよくなったとか…。
こうして信濃では、龍神さまがいるので10月を『神在月(かみありづき)』と言うようになった。
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『蒙古襲来』
九州が元(げん)の船に攻められた時、諏訪の龍神さまが飛んで行き、大風を起こして撃退した。
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『泉小太郎伝説』
諏訪明神さまの化身である犀龍(さいりゅう)が、白龍王と夫婦になり、産んだ人間の子・泉小太郎と協力し合って松本と安曇野を切り開いた。
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『甲賀三郎物語り』
蓼科山の地下から出られなくなった甲賀三郎が、地下の国・維縵国(ゆいまんごく)の王から贈り物【千頭 の鹿の生肝でつくった餅、菅という草であんだ行縢(むかばき)、御玉井紙(みたまいがみ)、萩の花、厄除けの投鎌(ないがま)、梶の葉の紋の直垂(ひたたれ)、三葉柏の幡】を貰い地上に出ると、大きな蛇になった。
動画『泉小太郎伝説』
学生さんがつくってくださった読み聞かせ動画です。
『信濃には神無月がない』
『蒙古襲来』
『泉小太郎伝説』
『甲賀三郎物語り』
諏訪の神道・仏教からみた龍神
神 道
<諏訪明神と龍神伝説>
諏訪の神は古来より水と風の守護神とされています。
諏方大明神画詞の中に、「元寇の役 即ち文永十一年(1274年)弘安四年(1281年)再度に わたる蒙古軍の襲来に際し、上社の神苑に巨龍立ち昇り西方に向かって飛翔し、博多湾上 に蒙古の軍船を撃滅し給う」という記述があります。 諏訪明神と龍の関係については、上社のご神体山である守屋山に雲がかかると雨が降る といわれており、山に鎮まる神が水の徳を秘めているとされています。そのようなことから 諏訪の神の姿は龍であるといわれ、蛇体となって顕われた甲賀三郎伝説にもみえています。
また、御渡りや湖の氾濫などの自然現象も、湖にひそむ水の精霊(=龍)の存在を彷彿と させるのではないでしょうか。『天竜川』の名も、それを連想させます。
水は生きていく上で欠くべからざるものです。生命の源、全てのものを育み、人々の心 に潤いをもたらす水。諏訪の明神様は水や風の守護神、龍神様として古くから親しまれ、 信仰されているのです。
『八劔神社』宮司
宮坂 清 様
仏 教
<諏訪人の心に住まう龍神さま>
今、私たちが認識する姿の「龍」は仏教と共に中国より日本にもたらされたといいます。 弘法大師さま(空海)も中国の青龍寺より龍神(清瀧権現)を日本にお連れし、密教の 守護神とされました。そして、諏訪の仏教は、伝来当初「法華経」というお経の信仰が 礎となり、法華経の中に説かれる八大龍王と共に龍の信仰もやってきたと考えられます。
その頃、この諏訪の地には豊かな大自然を崇拝する心、諏訪の神さまを信仰する心が 人々の生活の支えとなっていた事と思います。そこに「龍」という強大な力を持つ聖獣 が融合し、諏訪の龍神さまが生まれ、人々の畏怖する信仰となったのではないでしょうか。
それは、アニミズムでもあり、神さまでもあり、仏さまであったのです。龍神さまは諏 訪人の心に住まう信仰の結晶なのです。 かつて明治時代までは神さま仏さまが融合する信仰「神仏習合」が日本人の信仰の姿 でした。諏訪の地のそれは、仏教の諏訪信仰、神道の諏訪信仰、アニミズムの諏訪信仰、 そのすべてでした。総てが混ざり合い溶け込み諏訪人の心となります。豊かな諏訪の文化、 歴史の彩りは豊かな心が生んだ、諏訪の誇れる魅力となっています。
『仏法紹隆寺』住職
岩崎 宥全様
歴 史
<龍神さまのルーツは?>
この地球上に生まれた私たちの遠い祖先は、蛇を母なる大地のお使いとして、
また死と再生を繰り返す生命力のシンボルとして、恐れながらも敬ってきました。歴史とともに想像力の中でその信仰は大きく羽ばたき、中国で今に見る龍神さまの姿になりました。
天に昇っては雲をおこし雨を降らせ、海や大地にもぐっては龍穴を通じて地下水脈を自由に行き来する、大自然の威力そのものを象徴する存在です。
※石埜様が監修してくださった『諏訪の龍神さま年表』こちらです。